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平成東條日記「開戦の大義名分」

平成東條日記「開戦の大義名分」

「大東亜共栄圏だ」
東條さんが言った。
「そうですね。大川周明や徳富蘇峰の理論で十分でしょう」
わたしはうなずいた。
「いや待て。それでは危険だ」
それまで黙って聞いていた中嶋が口を開いた。
「どういうことだ。英米の植民地政策に対する理論として大東亜共栄圏は十分だろう。もちろん理論をもう少し洗練する必要はあるが」
「そういう意味じゃない。大東亜共栄圏の考えは十分完成されている。が、ただし、国内向けとしてだ」
「国外向けには不十分ということか」
「そうです、東條さん」
「しかし、独伊に対しては亜細亜に限ったことと説明が可能だ。実際、独逸の生存圏思想とそう変わらんし・・・」
「英米を刺激するということか?」
「たしかに刺激はするな。まあ、待て。結論を急ぐ必要はない。まずは、大東亜共栄圏という思想の根底だ」
「中嶋は十分理解していると思うが。むしろわれらより・・・」
「そう。要は東亜細亜のことは亜細亜で決める。欧米は口出すなということだろう。亜細亜の範囲の線引きで英米を刺激するかも知れないが、当初は印度や比島は含んでいない」
東條さんの言うとおり、中嶋の方が私たちより研究し尽くしているはずだ。
「そこだな。亜細亜で決めると言っても、東亜の独立国は、日本、支那、シャムの3国だけだ。しかも、シャムは小国で、日本は支那と戦争中だ。つまり、亜細亜のことは日本一国で決定する。従わない国は日本が征伐する。それが大東亜共栄圏だと、国外には映るわけだ。違うか?」
「うっ」
東條さんは、顔をしかめて黙り込んだ。

たしかに、中嶋のいうように欧米は解釈するだろう。日清戦争以来、日本は大陸に覇権を確立しようとしてきた、外交と武力で。
「日本は、武力を背景に大陸に進出した。そして、武力を背景に居座り続けている。満州国を建国したが、それに飽き足らず、支那全土を支配しようとしている。そうだろう?」
「いや。そうではない。支那のほうが、条約で認められた帝国の権益を侵しているのだ。外交で決めても支那は守らないし、守れない。ならば、帝国の臣民や権益は帝国自身で保護しなければならん。また、国際条約や協定を守らない支那に対して、外交圧力で不足ならば、軍事行動で圧力や報復を行うのは当然だ。そもそも、喧嘩を売ってきたのは支那の方だと言ったのは、中嶋お前だ」
東條さんは一気にまくし立て、中嶋をにらみつけた。さすがに迫力がある。
「そのとおりですよ、東條さん」
「は?」
「日本はそう理解しています、支那も、たぶん英米もね。ですが、友邦でも同盟国でもない他国をどうして素直に理解してやらなければならないのですか?」
「え?」
「日本が支那で勢力を拡大するということは、英米の利益にならないのですよ。わかりますか?」
「ああ、そうだな」
「自国の不利益につながる日本の行動に対しては、たとえ正当であってもおいそれと認めてはならんのですよ。それが彼らの外交であり政略なのです」
「そういうことか!」
「日本の対支軍事行動は、英米の権益を侵すものではないと説明し、理解を得るのが外交というものです。理解を得た後で軍事行動を始める。それが、彼ら英米のいう国際ルールです」

「しかし、その日本に好意を抱いてない英米がそれで納得するのか」
しばらく考え込んでいた東條さんが、やっと口を開いた。
「それはそれ。納得はしなくても日本の論理が正当であれば理解はするでしょう。腹の中は別にしても」
「なに?」
「それが、人事を尽くすということでしょう。説明の場を持つのと持たないのでは雲泥の差です。英米の権益を尊重している、だから近くで事を起こす前に、やむをえない事だと説明する場を持つ。英米は納得はしなくとも、日本が手続きやルールをわきまえていることは理解する。もちろん、利害が反すれば、やはり英米は敵対行動に出るかもしれない。しかし、日本が手続きを踏んだという事実は残る。英米もいきなり敵対行動に出るわけにはいかない、日本との交渉を持つかもしれない」
「わかった。他国の好意を当てにしてはいけないということだな」
「そうです。まして英米は敵性国家の筆頭ですから」
これが、中嶋の言う日本人の陥穽か。
「日本人は、基本的に善意で行動し、好意で解釈します。それをはっきりと明言することはありません。口にすれば、それは利益目的の行動に堕ちてしまう。黙ってやるから善意であり好意なのです。それが日本人の価値観です。それが日本人の行動規範なのです。しかし、それは日本国内の日本人同士でしか通じないということを、多くの日本人が自覚していません。軍人も外交官も政治家も」
なるほど。失念していたな。私も、海外にいた時は、いつも自省していたのだが。
「どうです。私がこう言うと、くどいとかうるさいとか感じるでしょう?」
「わかった、わかった。それで大東亜共栄圏はどうなる?」

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